スティックPCを電子看板(デジタルサイネージ)に活用するための制作記事の第2回目。今回は「構築編」として、スティックPCの運用プラン作成と実機のセットアップ等の模様をお届けします。

会社のPV(プロモーションビデオ)上映を主目的に設置された大型モニターでしたが、肝心のPVの撮影はこれから。完成は少し先になるので、まずはS&Iが取り扱うソリューションの紹介をスライドショーで流そうということになりました。

ご利用は計画的に。まずはどうやって使うか、考えてみよう

前回の記事では、大型モニター(液晶テレビ)を設置したところをご紹介しましたが、実はそれよりも前、モニターやスティックPCと一緒に設置工事も発注したころから、スティックPCの運用プランや、動画の再生手段、具体的な方法などの検討を始めていました。


1. 運用時間帯の検証 ―24時間は動かせないけど、電源落とすのメンドい ―
設置する電子看板は、ご来社いただいたお客様にお見せするものなので、エントランスがオープンしている平日の9:00~17:30の間だけ運用して、それ以外の時間帯は電源をOFFにしたいところです。
しかしスティックPC(Diginnos Stick DG-STK2S)の電源を切ってしまうと、毎朝の起動の際にWindowsのログオンパスワードを入力しなければなりません。毎朝、エントランスを開けてくれる総務の方に、キーボードを引っ張り出してパスワードを入力してもらうよう依頼するわけにもいかないので、夜間は電源OFFではなくスリープモードにしておくことにしました。

Windowsにはタスクスケジューラーがありますので、例えば『平日17:45にスリープ』、『平日8:45にスリープ解除』というスケジュールを組めばいいわけです。
また、モニター(テレビ)の取扱説明書を調べてみたら、ON/OFFタイマーは曜日と時刻の設定ができるようですし、祝日の設定はできないものの、しばらく映像入力がないと自動的にOFFになる機能もあるので、タスクスケジューラー側で祝日はスリープを解除しないように設定すれば、総務に起動を依頼しなくても、勝手に動き出してくれるはずです。

画像: 1日および1か月の運用時間帯を決めて、スケジュールを仮作成してみた。ここでは1日9時間、1か月22日と仮定して『約200時間/月』稼働させ、残りはスリープモードに。つまり稼働時間は4割未満。

1日および1か月の運用時間帯を決めて、スケジュールを仮作成してみた。ここでは1日9時間、1か月22日と仮定して『約200時間/月』稼働させ、残りはスリープモードに。つまり稼働時間は4割未満。


2. 運用形態の検討 ―いちいち実機の近くまで行って操作するのはメンドい―
当初はネットワーク上の共有フォルダーにスライドショーのデータを置いて、 DG-STK2Sには共有フォルダーからデータを読み込ませる計画でしたが、社外の方も出入りするエントランスへの設置なので、セキュリティーを考慮し社内ネットワークへの接続は見送り。

画像: 当初予定していた、社内ネットワークを利用した運用形態。ネットワークへの接続許可が下りず断念したが、説明用のこの図が残ってしまったので、せっかくだから掲載しちゃおうっと。

当初予定していた、社内ネットワークを利用した運用形態。ネットワークへの接続許可が下りず断念したが、説明用のこの図が残ってしまったので、せっかくだから掲載しちゃおうっと。

つまり、今回の電子看板において、DG-STK2Sは 『スタンドアローン運用』 ということになりました。データはUSBメモリーやBluetoothを使ってコピーするしかありません。リモートデスクトップでの操作も考えていたのですが、まあ、DG-STK2Sからネットワーク経由でどこかにアクセスするという必要性はないので、スタンドアローン運用でも特に気にしていませんでした。少なくともこの時点では…。


3. Windowsの設定内容の検討 ―途中で遅くなったり止まったりしませんように―
Windowsの設定内容もまとめてみました。運用中は常にスライドショーを上映するので、Windowsの省電力設定、特に画面周りの機能はすべてOFFにしなければなりません。

  • スクリーンセーバーは「なし」に設定
  • モニター(ディスプレイ)の明るさや電源OFFの設定も「なし」
  • スリープモードや休止状態への移行も「なし」
  • 電源プランは「高パフォーマンス」

電源プランについては、万一スライドショーがカクついたらカッコワルイので、「高パフォーマンス」に。消費電力は増えますが、DG-STK2Sに付属のACアダプターの出力は『5ボルト/3アンペア』。パフォーマンス最大でもこれだけの電力供給で足りるわけです。電源変換効率は不明ですが、仮に変換効率「80%」、電気代「25円/1キロワット時」、1か月の稼働時間を「200時間」(約9時間×22日)と仮定すると、1か月の電気代はわずか『94円』という計算になりますので、わざわざパフォーマンスを落とす必要はないと判断しました。

※『5V × 3A ÷ 80% ÷ 1000 × 25円 × 200時間 = 93.75円 ≒ 94円』

また、スライドショーが切り替わる時、一瞬だけWindowsのデスクトップ画面が映ってしまいます。一瞬とはいえ、ごみ箱やフォルダーアイコンが見えるのはみっともないので、次の設定も追加。

  • 壁紙は画像ではなく「単色:黒」
  • ごみ箱も含め、アイコンは配置しない
  • タスクバーは自動的に隠すよう設定

こうすれば、スライドショーが切り替わる瞬間に映るのは、真っ黒の画面だけになります。もしかしたらWindowsを使っていることさえ気づかれないかも知れません。

4. スライドショーの再生方法の検討 ―ぶっちゃけパワポなら得意なんで―
スライドショーのファイルは、新規に作ったものと、過去の展示会などで使ったものを更新したものを用意して、PowerPoint(パワポ)上で拡張子を 「.ppsx」 (スライドショー形式)にして保存。これで、パワポがなくても、PowerPoint Viewerでスライドショーを見られるようになります。

PowerPoint Viewerを選定した理由は、再生したいファイル名を「プレイリスト」にまとめて記述しておけば、起動時にプレイリストごと指定してまとめて再生できる点でした。再生順やファイルの差し替え・変更・公開中止などがあったときも、編集対象がプレイリストだけの分かりやすい作業なら、ほかの人にもメンテナンスを依頼できるようになります。このプレイリストを指定しての再生だけは本家パワポにはないようなので、この時点ではもうPowerPoint Viewerしか眼中に入っていませんでした。

そのほかにも「Web上のコンテンツをリアルタイムで表示させたい」というリクエストもあったので、いい方法がないか調べてみたところ、Mozilla FireFoxや Google Chromeを最大化表示させ、タブを順番に切り替えていくアドオンを何種類か見つけました。でも、切り替え時間をタブごと別々に設定できなかったり、逆にタブ1個ずつ手動で時間設定が必要だったり、設定が面倒になりそうなものばかり。
また、コンテンツが動画だった場合、きちんと設定しないと再生途中でタブが切り替わってしまうことも考えられるので、やはり最初は使い慣れたパワポ系で作ってみようと。どうせ、静止画と動画を繰り返し表示させるだけですしね。

こうして、スティックPCが届くまでの間、色々プランを練っては、テストを繰り返していました。

新型スティックPCが到着。さっそく構築開始

そして、いよいよ待望のCherry Trail世代のAtomプロセッサーを搭載したスティックPC、 Diginnos Stick DG-STK2S が到着。写真で見知ってはいましたが、記者が自宅で使っている DG-STK1Bよりも二回りぐらい大きく太く、スティックというより、まるで チョコレートバー

画像: 納品されたDiginnos DG-STK2S。電源ボタンが大きくなり、さらに本体中央に配置されて分かりやすくなった。

納品されたDiginnos DG-STK2S。電源ボタンが大きくなり、さらに本体中央に配置されて分かりやすくなった。

画像: DG-STK2側面のポート類:①電源ボタン、②microSDカードスロット、③給電用ポート、④USB 2.0ポート、⑤USB 3.0ポート、⑥ストラップホール

DG-STK2側面のポート類:①電源ボタン、②microSDカードスロット、③給電用ポート、④USB 2.0ポート、⑤USB 3.0ポート、⑥ストラップホール

写真でも分かるとおり、DG-STK2Sには、記者が欲しくて欲しくてたまらなかった、待望のUSB 3.0ポートが搭載されていました。でも残念ながら今回は出番なし。個人的には じっくり&ねっとり いじくり回したいところですが、今回のミッションはレビューではないので我慢です。
DG-STK2Sのレビューは、さまざまなメディアで取り上げられてますので、 こちら からご参照ください。


さて、いよいよスティックPCの実機上に環境構築です。
DG-STK2Sの電源を入れると、まもなく次のような画面が表示されます。おなじみ(?)のWindowsの初期設定画面ですね。

画像: Windows 10の初期設定画面の一部。今回はスタンドアローン運用なので、自動的に外部へデータを送信する設定はすべてオフにした。

Windows 10の初期設定画面の一部。今回はスタンドアローン運用なので、自動的に外部へデータを送信する設定はすべてオフにした。

でも、ここから先が普通とはちょっと違います。このスティックPCは『スタンドアローン運用』なので、スティックPCから外部のネットへデータを送信する設定を、すべてOFFにします。
データを外部に送信しようとすること自体がリソースの無駄遣いですし、もしかしたらスライドショーの途中に、突然「送信エラー」等のメッセージが出ちゃうかも知れません。何が出てくるかよく知りませんが、お客様の前で大画面に出たら恥ずかしいので、必要ないものは切ってしまいましょう。

以下は、Windows 10の初期設定画面で表示された項目のうち、今回「OFF」に設定した項目です。

    個人用設定
  • 連絡先、カレンダー詳細、その他の関連する入力データを Microsoftに送信
  • タイピングと手書きのデータを Microsoftに送信
  • アプリ間のエクスペリエンスのために、アプリが広告識別子を使う許可
  • Skypeでアドレス帳に登録されている友だちとつながったり、携帯電話の番号確認

  • 位置情報
  • [デバイスの検索]を有効化し、位置情報の要求を許可

  • 接続とエラー報告
  • 推奨されるオープンホットスポットに自動接続
  • 連絡先によって共有されたネットワークに自動接続
  • 有料Wi-Fiサービス確認のために一時的にホットスポットに接続
  • エラーの詳細と診断情報を Microsoftに送信

  • ブラウザー、保護、更新
  • SmartScreen オンライン サービスで、ブラウザーまたはストアアプリが読み込む悪意のあるコンテンツやサイトのダウンロードから保護
  • ブラウザーでページ予測、閲覧データをMicrosoftに送信
  • アプリとWindowsの更新プログラムのダウンロードを高速化するために、ネット経由で更新プログラムを取得し、他のPCに送信

ほかにもあったような気もしますが、まあ、Windows起動後でも設定変更できますので、気にしないでおきましょう。でも、こうして見てみると、普段気づかないところで、勝手にいろんな情報を送信していたんですね。カレンダーに恥ずかしいヒミツを書いちゃったら、Microsoftに送信されちゃうってことですか?

ヒツジが627万9935匹…ヒツジが627万9936匹…ヒツジが627万9937匹…

初期設定が終わったら、PowerPoint Viewerをインストールして、テスト用のPC上で作動確認済みの環境をスティックPCの内部ストレージにコピー、パス名(フォルダー名)等をスティックPCの環境に合わせて書き換えてやります。 作動確認済みの環境をコピーしているのですから、あとはチョコっと修正する程度でミッションコンプリートの予定です。この記事も「壮大なスケールでお届け」などと予告しておきながら、案外あっさり終わっちゃいそうですね。いや、ホントに終わっちゃいそうでした。だって、テスト用PCからコピーした環境が、予想どおり快調に動き始めてたのですから。

ところがぎっちょん! 意外な落とし穴がありました。

rundll32.exe PowrProf.dll,SetSuspendState

これは、Windowsをスリープモードへ移行するためのコマンドです。夜間にスティックPCをスリープモードにするよう、タスクスケジューラーに渡すコマンドに間違いがないか、バッチファイルを組んで作動確認をしてみたのです。
本当は SetSuspendState を rundll で呼び出すのではなく、直接 PowrProf.dll の中から呼び出すべきとされていますが、この時はお手軽なこの方法を使いました。これでもスリープモード(スタンバイ)か休止モード(ハイバネーション)のどちらかに移行するはずですから。

でも… あれ?スリープしないぞ…。 「眠りをもたらす安らかなる空気よ」 じゃなくって 「万能なるマナよ、かの者に刹那の眠りを」 だったっけ?それともザントマンに砂をかけてもらうか?

いろいろと試してみたのですが、シャットダウン(停止)とリブート(再起動)は問題ないものの、どうやってもスリープ(スタンバイ)にも休止にもなりません。こんなこと初めてで原因がまったく見当つかなかったのですが、まずは現在スリープと休止のどちらが有効になっているのか確認しようとしたら、次のメッセージが…。

画像: コマンドプロンプト上でスリープの状態を確認。スリープも休止もサポートされていないらしい。

コマンドプロンプト上でスリープの状態を確認。スリープも休止もサポートされていないらしい。

設定の問題ではなく、ハードウェアがスリープモードも休止モードもサポートしていないようです。なんだ、呪文の覚え間違いじゃなかったのか、よかった…… って、よくないよ!!!!

スリープモードに移行できないと、最初に計画した運用時間をスケジュールできません。
でも、ハードウェアがサポートしていないのなら、どう頑張ったってスリープにも休止にもできないのですから、夕方に自動的にシャットダウンさせて、朝は総務の方にお願いして手動で電源を入れてもらうしかなさそうです。
それには Windowsへのログオンパスワードが邪魔になりますので、まずパスワードを削除。そして平日の「17:45」にシャットダウンするよう、タスクスケジューラーに設定…… って、パスワード消したらタスクスケジューラーは使えないんだった!!


「案外あっさり」どころか、当初の運用計画が続けざまに破たんし、雲行きが怪しくなってきました。
しかし、こんなのはまだほんの序の口で、本当の闘いはこれからでした…。この時は予想していなかったのですが、それはまた次回。

―次回、「熱闘編」につづく

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.