突然ですが、11月は官民で構成された「テレワーク推進フォーラム」が主唱している、『テレワーク月間』です。1年のうち1か月も使ってテレワークをもっと知ってもらって、「働き方改革」すなわちワークスタイル変革を推し進めようという運動なのですが、当然『テレワーク導入=ワークスタイル変革』というわけではありません。しかし、何をすればどう変わるのかという具体的なイメージは「テレワーク」という言葉だけではなかなか見えてきません。
先月のことですが、企業の生産性向上と従業員満足の両立をテーマに、ワークスタイル変革の現状とさまざまな課題を提起し、事例紹介やソリューション等を紹介するセミナー『経営課題解決シンポジウム・生産性向上と従業員満足を両立させるために』(主催:日経ビジネスオンライン)が開催されました。今回はその中の各講演の概要を、現状どんな問題(課題)があるのかも含めて、ご紹介します。

世界の大きな動きに合わせた斬新なワークスタイル変革を!

この日最初のセッションは、『新しいワークスタイル~日本企業の課題』と題した、一橋大学 名誉教授・石倉洋子氏の基調講演でした。

インターネットの普及により、情報は国境を越え、海を越え、瞬時に世界中に配信されるようになりました。海外の拠点で日本語を話せるオペレーターが応対するのも当たり前の光景です。国や人種、世代、性別などはだんだん境界がなくなりつつあり、さらに、自動車会社が電池を作り、IT企業がクルマを作り、飲料会社が花を作り、フィルム会社が化粧品を作り…と、業界や組織の境界もなくなろうとしています。その上、将来はロボット(機械)が人間の職を奪うと言われているように、職場の中で人間と機械の境界もなくなろうとしています。
石倉氏は「世界はこんなにも大きく変化しているのに、日本の企業は高齢化が進み、変化への即応性(スピード感)が乏しく、失敗を恐れるあまり過去の成功例やビジョンを焼き直して繰り返す傾向にある」と警鐘を鳴らすとともに、世界の大きな変化に合わせて、終身雇用制や正社員制をはじめとする従来の常識や手法を捨て、新たなビジョン、ワークスタイル、およびライフプランによる、新しい働き方を追求していこう―と、講演の中で呼びかけました。

全般的に、日本企業はぬるい、ゆるい、時代遅れ…という感じの、かなり辛辣な内容でしたが、それと同時に、労働者一人一人も同じことを繰り返すのではなく、世界の変化を見ながら、新しいスキルの獲得と新しい仕事、さらにリタイア後の人生において必要なスキルなども考えて身に着けていかなければ、この先苦労するだろうというものでした。

そういえば、講演の中でのキーワードの一つに「第四次産業革命」(インダストリー4.0)という単語が出てきたことを思い出しました。ドイツがこれを政策に掲げてから、日本の経産省が追随したのは5年も後。もちろんその間のビハインドは簡単に埋まりませんが、そのインダストリー4.0も、もともとは日本で発表された客業生産論に端を発していると言われているので、先見性はあったのに、石橋を叩きすぎたのか、新幹線の国なのに牛車に乗ってしまったのか、なんだかもどかしい気分になりました。
石倉氏のスパイシーな講演で日本企業が、そして個人が目を覚ましてくれればいいのですが、正直なところ、経営者にも労働者にも何か鋭いものがグサグサっと突き刺さるような、そんな講演でした。

モバイルを徹底的に活用して、ワークスタイルを変革へと導く

ワークスタイルの変革には、スマートフォンやタブレット等のモバイル端末の業務利用が欠かせません。今や「働く場所」は「デバイス(PCと固定電話)がある場所」―つまり会社の机の上から、外出先や在宅勤務など「人がいる場所」に変わりつつあります。それと同時に、社内のシステムをモバイル端末からセキュアに利用するために、EMM(エンタープライズモバイル管理)の導入が欠かせなくなっていますが、BYOD(私用端末の業務利用)の利用者を取り込めないために、導入に踏み切れなかったり、導入しても活用できない等の問題が起きています。
このセッションでは、レコモット(株)代表取締役CEO 東郷剛氏が、真のモバイルワークを実現するための新しい手法について、モバイル環境から簡単でセキュアに社内システムリソースを利用できる同社のモバイルソリューション「moconavi」(モコナビ)を例に解説しました。

EMMはもともと、端末のOS、アプリケーション、データ、使用履歴、ロケーション情報、アドレス帳など、端末に関わるあらゆる情報を管理するMDM(モバイル端末管理)がベースになっています。MDMはCPD(会社支給端末)にリモートロックやリモートワイプ等の機能や、さまざまな管理・制限の機能を提供するものでしたが、BYODではプライバシー保護の観点から適用しづらいということで、端末やOS以外をMAM(モバイルアプリケーション管理)MCM(モバイルコンテンツ管理)で管理するしくみができました。
しかし、MAM/MCMはMDMをベースにしているため、MDMなしでの導入ができません。BYODの利用者はMDMで自分の端末を管理されることを嫌う傾向があるため、MDMの存在自体がBYOD普及の足枷になっていました。

そこでMDM分離型EMM・moconaviの出番です。MDMなしでは端末を紛失したときのデータ流出が心配なのですが、moconaviではMDMとMAM/MCMの役割そのものを見直して、EMMを再定義することで、この問題をクリアーしています。

従来のMDM一体型EMMでは、MDM側でセキュリティーを担保していましたが、MDM分離型EMM・moconaviでは「守るべきものは何なのか?」という視点から、最優先事項に『業務アプリケーションのデータと実行権限の管理』を据え、アプリケーションのOTA配信やアプリストアーの機能をMAMからMDMへ移し、代わりにMCMの機能をMAMに統合して、MAM側で業務アプリケーションとデータを管理することでセキュリティーを担保。これにより、MDMなしでもMAMとMCMの機能が利用できるようになりました。
また、UC(ユニファイドコミュニケーション)も管理するべきだという考えに基づき、MUC(モバイルUC管理)という新しい概念をEMMに統合しています。

moconaviを導入したモバイル端末のホーム画面には、一般的なアプリや機能のアイコンに混じって、[moconavi]アイコンが一つだけ配置されています。この[moconavi]アイコンを開くとサンドボックス化されたMAMワークスペースが開きます。
ワークスペース内では多数の業務アプリ(カレンダー、アドレス帳、e-Mail、セキュアブラウザー、チャット、ダイヤラー、CRM、拡張アプリ(moconaviプロトコル)、ストレージ、ドキュメントビューワー)を利用できるため、moconavi 一つで多数の業務アプリを提供するようなイメージとなります。

画像: moconaviの利用イメージ。業務アプリケーションはサンドボックス内(MAMワークスペース)で提供される

moconaviの利用イメージ。業務アプリケーションはサンドボックス内(MAMワークスペース)で提供される

こうして業務アプリで作成・閲覧したデータはMAMワークスペースの外に出ることはなく、端末内にもデータが残らないので、万一端末を紛失しても業務データが流出する心配がない、ということでした。

このように、一つのアプリケーションで業務に必要なアプリや機能をすべて提供することで『どこでも、誰でも、そしてどのデバイスでも』仕事ができるようになったという説明の後、最後は「これこそエンタープライズモビリティーの本質であり、企業が取り組むべきではないか?」と、同社が考えるモバイルワークの理想形を説く内容でした。

Office 365とモバイルシンクライアントで利便性と安全性の両立を実現!

続いての講演は、日本マイクロソフト(株) Surface Marketing シニアプロダクトマネージャー 土屋奈緒子氏と、S&Iマーケティング本部 疋田和可奈によるコラボセッション。Microsoft Office 365と電話などの通信設備の連携・統合による理想的なテレワーク環境と、テレワークに最適なSurface Pro4ベースのシンクライアントなどについて紹介しました。

マイクロソフトは、2011年の東日本大震災を契機に、災害時の事業継続のためには社外のどこにいても仕事ができるワークスタイルへの変革が必須だとにらみ、年に1回(1~3日)の「テレワークの日」、その後 年に1週間の「テレワークウィーク」を定めて実際にテレワークを導入するとともに、その後、外部にもテレワークの導入を呼びかけ、現在では800社を超える企業がテレワーク導入の趣旨や企画の推進に賛同し、昨年は650社以上が「テレワーク週間」を実施するなど、企業のテレワーク導入推進を主導しています。

画像: マイクロソフトのワークスタイル変革への取り組み。自社だけで始めた「ワークスタイルの日」や「ワークスタイル週間」には、年を追うごとに賛同企業が急増している。

マイクロソフトのワークスタイル変革への取り組み。自社だけで始めた「ワークスタイルの日」や「ワークスタイル週間」には、年を追うごとに賛同企業が急増している。

マイクロソフトのOffice 365を活用することで、業務のほとんどをテレワーク化できることは、以前café SANDIの記事でもご紹介しましたが、セッションでは、単にテレワーク化するということではなく、それを「ワークスタイル変革」として進めるために、次の五つの改革のポイントを挙げました。

  • 経営ビジョン:「ワークスタイル変革」をビジョンに据える
  • 社員の意識:「会社以外でも仕事はできる」という意識改革
  • オフィス環境:働きやすい物理的なオフィス環境
  • 制度やポリシー:人事・労務などの制度・ポリシーの整備
  • ICTの活用:テレワークに必要なITおよび通信技術の導入

さらに、各担当部門主導ではなく、経営層が主導権とリーダーシップを持って、『推進』ではなく『牽引』することが肝心なのだそうです。つまり後押しするのではなく、上の方から引っ張り上げなくっちゃ!ということですね。

マイクロソフトのこうした提言に耳を傾ける企業が増えていく中、今年4月、熊本地震が発生。震度7が2度も観測される大地震でしたが、熊本市に本社を置くある企業では、特に災害対策を進めていたわけではないものの、Office 365を導入していたおかげで、震災時にもダウンタイムがほぼゼロで業務を再開できたのだそうです。災害時の連絡網も Yammerや Skype for Businessで事足りたそうで、今ではそのときの経験から、被災した他の企業にOffice 365を活用した柔軟な働き方と事業継続の手法を提案している、という話題も紹介されました。

マイクロソフトが目指しているワークスタイル変革とは、特定の問題(例えば育児や介護など)を持つ社員のための在宅テレワークのようなものではなく、『すべての社員が、いつでもどこでも、自分のワークスタイルに合わせて仕事をできるようになること』。こういう『いつどこ社員』がもっともっと増えるよう、これからもさまざまな企業に呼び掛けていくそうです。

画像1: Office 365とモバイルシンクライアントで利便性と安全性の両立を実現!

そしてS&I からは、Office 365と連携して、テレワークの「電話」の部分をより完璧な形に近付ける uniConnect 3を紹介。café SANDIでも何度も紹介していますが、「uniConnect 3」とは、どこにいても会社の電話番号(内線番号、外線番号)のまま発着信ができる、FMCソリューションです。

uniConnect 3は、通話自体は転送電話なのですが、自分と相手先のスマートフォンや電話機のディスプレイ部に表示される電話番号が、着信時は発信元(相手先)の番号、発信時は自分の会社の番号であるという点が大きく異なります。
そのほかにも、保留転送、代理応答など、一般的なビジネスホンの機能のほとんどを、スマホでも使えるようになり、さらにSkype for Businessのコンタクトリストの中から、相手側のプレゼンスを確認した上で発信できる上、保留転送や代理応答などの機能も使えるようになるというスグレモノ。Office 365との相性の良さをばっちりアピールしてきました。

画像: uniConnect 3でビジネスホンの機能をスマートフォンでも使えるようになることで、「どこでもオフィス」がより完璧なものに近付く

uniConnect 3でビジネスホンの機能をスマートフォンでも使えるようになることで、「どこでもオフィス」がより完璧なものに近付く

また、このほか、Surface Pro4をベースにしたシンクライアント「ThinBoot ZERO」Type-Mや、ストレージの複雑さを解消しコストを抑える VMware VSANの導入など、理想的なテレワーク環境構築のために欠かせないソリューションの数々をご紹介しました。
実はS&Iの講演内容は、以前のcafé SANDIの記事でお伝えしたものとほぼ同じ内容なので、ここでは詳しい内容は割愛しますが、Office 365とuniConnect 3の活用で企業の生産性を上げ、Surface Pro 4ベースのThinBoot ZEROで「どこでもオフィス」をよりセキュアなものにし、さらにVSANで導入コスト、管理コスト、運用コストなどを削減しよう、という内容でした。

画像2: Office 365とモバイルシンクライアントで利便性と安全性の両立を実現!
画像3: Office 365とモバイルシンクライアントで利便性と安全性の両立を実現!

未来予知は難しいけど、万一のときにササっと動ける組織なら作れるじゃん?

続くセッションは、Domo(ドーモ)社のシニアソリューションコンサルタント・奥野和弘氏による講演・『予測不可能なビジネス環境を勝ち残るための組織のあり方とデータの活用』でした。
ここまでの他の講演にもあったとおり、昨今の世界の情勢やビジネスの環境は大きく変化していて、先々の予測が難しくなってきています。もう講演のタイトルだけで概要は予想できるかも知れませんが、そんな予測が難しい、不測の事態に遭遇したときに、適切に対応できる組織と施策づくりについての紹介です。

従来の企業におけるヒエラルキー型組織では、情報は意思決定者に向けて組織の下部から上部へと集約されていました。つまり、意思決定が管理職、役員、社長など、一握りの人によって下されるため、情報が伝わるまで実行に移せないわけです。
これは企業を取り巻く環境に変化がないときには適しているのですが、変化と複雑さを増す昨今のビジネス環境の中では、急に状況が変わったときに即座に対応できないことを意味しています。

今日のようなVUCA時代では、突然父親が白い犬に姿を変えるほど「予想外」なことは起きないものの、リーマンショックのときのような「まさか」の事態が、何の兆候もなく、もしかしたら来週、それどころかこの記事を読んでいるこの瞬間にも起きるかも知れません。そういう予測し得ない事態にも即時対応できる組織でなければ、もはや生き残れない時代である―という厳しい指摘でした。
※VUCA(ブーカ):Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、およびAmbiguity(曖昧)の略。

予想できない事態が起きたときでも、最終的に何がどうなればいいのかという哲学が企業の内部で徹底していて、あとは情報さえ把握できれば、上からの指示がなくても個々の判断で動けるものです。
Domoはそのためのビジネス管理ツールを提供していますが、この日はそちらの説明はなかったので、詳しくは同社のサイトでご覧ください。

会社の外を変えるばかりが「ワークスタイル変革」じゃあない!!

この日最後のセッションは『自分らしさと能力を活かす、これからの組織と個人の関係を考える』と題した特別講演。株式会社岡村製作所(オカムラ) マーケティング本部 未来企画室 室長・遅野井(おそのい)宏氏が登壇しました。

講演では、最初に「『ワークスタイル変革』とは、働くスタイルを根本から変えるということ。そもそも働くスタイルを変えること自体が難しいのに、それを外部からとやかく言われて根本的に変えるなんて、簡単にできるはずがない」…と、いきなり一刀両断!ワークスタイルという語句に対するイメージがさまざまなのでいろいろな施策があるけど、根本を変えるまでに至っていない、という指摘から始まりました。

  • 内発的な動機付けによって危機感をあおらないと『スタイル』は変わらない
  • その動機付けを喚起するには、実感できる効果(短期的ゴールの設定)が必須
  • 納得できる/前進感のある効果が定着して、はじめて『スタイル』が変わる

遅野井氏は、上記3点を「ワークスタイル変革」推進のポイントとして掲げ、企業の生産効率を阻害していると思われるオフィス環境のネガティブな要素:複雑な人間関係、長時間労働やオフィス環境の劣化など―の解消が欠かせないと解説。特に、企業を「健康経営」に導くために、アブセンティズム(※)やプレゼンティズム(※)のリスクを戦略的に予防することで、労働者のパフォーマンスを引き出し、労働者が仕事に誇りを持ってエネルギーを注ぎ、仕事から活力を得て健康的に生き生きと働く「ワーク・エンゲージメント」の実現を訴えかけました。
※アブセンティズム:体調不良等が原因の欠勤が多い状態。プレゼンティズム:健康上の問題で本来の能力を仕事に発揮できない状態
さらに、オフィス家具のトップ企業ならではの視点から、人それぞれの感性に応じた「働きやすい/働きがいのあるオフィスの設計」についても、多数の提言がありました。

つまり、モバイルやWeb会議などのICTによって会社以外の場所で働くワークスタイルだけでなく、今までの会社とは一味も二味も違う、快適なオフィス環境の提供によってワークスタイルを変えるという手法ですね。「くつろぎオフィス」というか「とことんオフィス」というか、うまい言い回しが思い浮かばないのですが、こういう別のアプローチによるワークスタイル変革というのも、なかなか興味深いものでした。


真のワークスタイル変革のためには、ICTからの観点だけでなく、どうやら人にも、組織にも、オフィスの環境にも変化が必要そうです。もちろんm簡単に導入して簡単に実現できれば一番楽なのですが、この先もさまざまな事象を注視しながら、最適解を導き出すことが肝心なようです。

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