さる2月10日、テクマトリックス社主催のコンタクトセンター(CC)業界向けのセミナー「テクマトリックス CRM FORUM 2016」が、東京・芝公園で開催されました。

10回目となる今年のセミナーは、「コンタクトセンターから顧客感動を」というテーマで、テクマトリックス社とパートナー企業各社が、コンタクトセンターや顧客管理の最新動向、ソリューションや導入事例・運営事例などを紹介。時間ごとに区切られた32ものセッションに、多くの聴講者が詰め掛けました。
また、展示コーナーでは、テクマトリックス社を含む21社が、最新ソリューションを展示。セッションの合間の休憩スペースも兼ねていたため、たくさんの来場者でごった返していました。

画像: 来場者で埋め尽くされたテクマトリックス社の展示ブース。同社のCRMシステム「FastHelp5」やFAQシステム「FastAnswer」などを紹介

来場者で埋め尽くされたテクマトリックス社の展示ブース。同社のCRMシステム「FastHelp5」やFAQシステム「FastAnswer」などを紹介

今回のセミナーでは、顧客管理(CRM)、データ分析、音声認識および音声分析、Webコラボレーション、ワークフォースマネジメント(WFM)など、各社の最新ソリューションや事例が紹介されました。講演は、32のセッションが8会場(8部屋)に分けて開かれていたので残念ながら聴講できるのは最大4つまで。それらを事前登録して申し込む形だったので、私も開催前からどのセッションに参加するかさんざん悩んだ挙句、WebRTCによるオムニチャネル化の手法と、BMW「コネクテッド・ドライブ」の事例紹介などのセッションを選びました。

画像: 会場で手渡されたプログラム。こんなにたくさんセッションがあるのに選べるのは4つまで。なんとも悩ましい。

会場で手渡されたプログラム。こんなにたくさんセッションがあるのに選べるのは4つまで。なんとも悩ましい。

WebRTCでビデオチャット。そしてコンタクトセンターでの活用

私が聴講したセッションの一つが、コミュニケーションビジネスアベニュー社による、WebRTCによるコンタクトセンターのオムニチャネル化の手法と事例の紹介でした。

WebRTCとは、ボイスチャット/ビデオチャットやファイル共有などのリアルタイムコミュニケーション(Real-Time Communication:以下、"RTC")を、Webブラウザーだけで可能にするためのオープンソースのAPI。 WebRTCWebRTC ってわけですが、分かりやすく例えると、LINEやSkypeなどのアプリと同じことを、専用アプリやプラグイン等を使わずに、Webブラウザーだけでやっちゃおう、というものです。あ、もちろんカメラやマイクは要りますよ。

既にGoogle Chrome、Mozilla FireFox、OperaがWebRTCに対応していて、ほかにもMicrosoft EdgeがWebRTC互換のORTC(Object-RTC)に対応。SafariとiOS版Chromeは未対応ですが、この先WebRTCへの対応が進むと、コンタクトセンターのオムニチャネル化も進むと言われています。

オムニチャネル化…なんて、サラっと書き始めていますけど、私も 昨年秋のイベント の時に、初めて「オムニチャネル」という用語を耳にし、慌ててスマホで検索して調べた記憶があります。
その時は「多数の路線同士が無数の駅で接続されていて、どこからでも乗り換えができて、さまざまなルートで目的地にたどり着ける、 東京の地下鉄+山手線のようなもの 」と、独自の解釈をして納得したのですが、あれから私も少しは勉強しまして、理解度が深まっているはずです。たぶん。


ちょっくらちょいと「オムニチャネル」のおさらい

例えばお客様(顧客)が何かの商品を購入する際、商品を手にするまでの間に、どこで商品を知って、興味を持って、検討、購入し、受け取って…というプロセスがありますが、ここでは簡単に「商品情報取得」、「商品購入」、および「商品受け取り」の3つのプロセスで考えてみましょう。
例えば、昔ながらの一般的な「買い物」の場合、店舗で商品を見て、包んでもらい、商品を受け取って帰るという感じで、すべて店舗だけで購買プロセスが完結していました。このようにチャネルが1つだけで、それ以外の購入方法が存在しないようなスタイルを【シングルチャネル】と呼びます。

その後、商品情報は新聞・雑誌やテレビ、カタログ等のメディア、購入は電話やハガキ等、商品は自宅へ配達するという「通信販売」が登場しました。チャネルは増えたのですが、購買プロセス自体はほぼ一方通行のまま。これが【マルチチャネル】です。

【オムニチャネル】は、顧客と商品の接点を、顧客自身に自由に入れ替えてもらい、最終的に商品をゲットしてもらうというスタイルです。オムニチャネルは各プロセスにおけるチャネルがすべてつながっていて、例えばテレビCMで商品を知って、Webで商品情報を調べて、店舗で実機を触って検討し、電話で注文して、自宅に配達してもらう、という一連の動向をすべて見越して、自社が持つチャネル内で自由に動いてもらって最終的にお客さまに商品を提供する、というものです。

画像: WebRTCでビデオチャット。そしてコンタクトセンターでの活用

神にはなれなくても、WebRTCなら「ネ申」にはなれる…かも

さて、コンタクトセンターのオムニチャネル化とは、ユーザー(顧客)が連絡してくるところから、顧客が抱える問題点の解決までの間の各プロセスが、あらゆるチャネルを通じて次のプロセスへと伸びている状況を指します。

従来のオムニチャネル化されていないコンタクトセンターの場合、ユーザーは次のような不満を持っています。

  • アプリからサポート窓口を探しても、直接電話で問い合わせることになる
    ☞アプリやWebページ上で「お問い合わせ」という項目を見つけても、そこに電話番号しか書かれていなかったら、電話でコンタクトするしかありません。
  • IVR(自動音声応答)が長い。返答できるようになるまで待つのが面倒くさい
    ☞例えば『操作に関するご質問は[1]、修理・交換のお問い合わせは[2]…』なんてメッセージを延々聞かされるよりは、一覧表から選ぶ方がずっと楽なはずです。
  • 同じ情報を何度も入力したり、口頭で伝えたりさせられる
    ☞顧客情報が共有されていないせいで、担当者が変わるたびに最初から説明しなければならないなんて、ナンセンスです。

こうした不満は、オペレーターを増やしても解決しません。そんなことよりも、ただ電話番号を書いておくのではなく、 [お問い合わせはこちら] のようなリンクやアイコンをクリックしたら、オペレーターがボイス/ビデオチャットで問い合わせに答えてくれる、という仕掛けがあったら、面白いと思いませんか?そういうページを、特殊なプラグイン等を使わなくても作れるようにしたものが、WebRTCなのです。

WebRTCなら、ブラウザー内に表示中のテキスト、図表、写真などを共有できたり、Webフォームへの入力をユーザーではなくオペレーターが一部代行で入力したり、従来の電話やメールだけでの応対とは異なる、きめ細かなサービスができるようになります。

画像: WebRTCなら、Webブラウザーだけで動画やテキストによるチャットも可能になる。

WebRTCなら、Webブラウザーだけで動画やテキストによるチャットも可能になる。

例えば、一部のユーザーから 「ネ申」 と称されている Amazonの電子ブック端末「Kindle Fire」の「Mayday」サービスは、WebRTCを駆使したカスタマーサポートの典型例でしょう。
これはKindle Fire専用のサポートサービスで、画面に表示された[MAYDAY]ボタンを押すと、ネットワーク経由でAmazonのサポートセンターを呼び出し、WebRTCのビデオチャット機能でオペレーターとリアルタイムに会話をしながら問題解決を図るというものです。
また、自分の端末の画面表示内容はオペレーターと共有されるので、同じ画面を見ながらリアルタイムにサポートしてくれますし、必要に応じてオペレーターが画面内に印をつけて「ここをご覧ください」などとガイドしてくれます。そのため、画面の表示内容を口頭で説明したり、表示結果の確認を求められるという、面倒で時間のかかる儀式が丸ごとなくなり、問題解決までの時間、つまりサポート時間が大幅に短くなると同時に、短時間で用件が済んでユーザーのイライラもなくなります。

WebRTC導入でオムニチャネル化完了…というワケじゃあない

従来、Webでの情報収集はPCが主役でしたが、今後はモバイルが中心になりつつあります。
WebRTC対応のデバイスも、数年前まではほぼ100%をPCが占めていましたが、最近はスマートフォンやタブレットにも対応し、利用者も従来のビジネスユーザーから、コンシューマー中心になってきて、活用の場がB2BからB2CやC2Cへと広がってきています。
その結果、コンタクトセンターのシステムもオペレーターの業務内容も、電話だけでなく、他のチャネルも使って横断的にお客様の問い合わせに答えられるか、つまり、オムニチャネル化ができるかどうかが、今後の課題となります。

しかし、WebRTCが実用レベルの域に達していても、既にコンタクトセンターにある電話システムと連携しているわけではないので、WebRTCを導入しても、ユーザーの多くは未だにコンタクトセンターに電話をかけて、電話サポートを受けようとしますし、Webからコンタクトしてきたユーザーも、多くはそのままメールでサポートを受けようとします。これでは結局「電話は電話で」、「ネットはネットで」という、マルチチャネルのコミュニケーションしかできません。

そこで、WebRTCでコンタクトセンターをオムニチャネル化するためのツールとして、同社が手掛ける「 Live Assist 」について、その機能と事例が紹介されました。

Live Assistでオムニチャネル化すると、こんなことができちゃう!

  • ボイスチャット/ビデオチャットでのコミュニケーションに電話代がかからない
    ※ネットへの接続料やデータ通信料・パケット通信料等は必要
  • いつでもどこでも(会社/自宅/外出先から)、その時に最も都合のいい手段(音声/ビデオ/文字)で、すぐに連絡できる
    ※固定回線、LTE、Wi-Fi等によるネットへの接続が必須
  • ユーザーが見ているページを閲覧・操作
    ☞オペレーターが画面に直接書き込み/入力できます。
  • 見せたい画像や文書を直接送信
  • IVRがビジュアルIVRに!
    ☞電話機のボタンではなく、ブラウザー内に表示されたボタンで選べば、担当オペレータを直接呼び出せます。

え?塀の中でもWebRTC?

セッションの終盤では、Live Assistのさまざまな導入事例が紹介されましたが、ちょっと変わったところで、北米のある刑務所での事例がありました。受刑者が端末の使い方をコンタクトセンターに問い合わせるんじゃありませんよ。受刑者が弁護士と接見するときに使うのだそうです。

Live Assistを導入したことにより、例えば弁護士は刑務所まで出向かなくてもリアルタイムで受刑者と接見できるようになり、また、必要な書類があれば、弁護士がファイルを直接送信して内容を画面に表示。さらに画面共有と直接操作により、弁護士が画面中の書類にアンダーラインや丸印などを入れながら受刑者に説明できるなど、これまでとはまったく異なる形の接見ができるようになったのだそうです。

画像: え?塀の中でもWebRTC?

コンタクトセンターとはちょっと違いますが、面白い活用方法ですよね。

その他のセッションの話題もお届けしたかったのですが、長くなりましたので、また次回に。
次はBMWの 「コネクテッド・ドライブ」 のお話です。

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