かつて江戸で屈指の花街だった人形町界隈には、老舗の高級店から立ち食いのチェーン店まで、じつに多くのそば屋がありまして、そば好きにとってはパラダイスのような街かもしれません。じつは(この記事の)記者も、ラーメンよりも迷わず日本そばを選ぶ大のそば好き。そんなわけで、人形町のおいしい路麺(立ち食いそば)のお店をご紹介します。

「え、立ち食いそば?」とあなどるなかれ。押しも押されもせぬ路麺の名店!

今回ご紹介するお店は、日比谷線人形町駅からほど近い場所にある「福そば」。開業は2009年で、老舗も多いこの界隈のそば屋の中では比較的新しいお店ですが、いつの間にか東京を代表する路麺の有名店になっていました。
有名になったのにはもちろん理由があります。その理由は至極単純。おいしいんです。路麺とは思えないぐらい、おいしいんです。大事なことなので二回言いました。
記者は以前からこの界隈で仕事をしていまして、その後1年この地を離れていた間、この「福そば」の味が恋しくてたまらなかったぐらいです。

画像: 今や東京屈指の路麺の名店となった「福そば」の店構え。

今や東京屈指の路麺の名店となった「福そば」の店構え。

家康が生きていたなら即死確実。どれにしようか「天ぷら」ラインアップ

店に入ると、いきなり券売機と細長い店内の奥まで続くL字カウンターがドーン!と視界に入ります。
初めてで何をどうしていいか分からない人は、何も考えずに券売機におカネを入れて、[天ぷら(かき揚げ)そば・うどん] (かけそば+かき揚げ) か[天もり そば・うどん] (もりそば+かき揚げ) のボタンを押しちゃいましょう。

カウンターにはたくさんの種類の天ぷら(かき揚げ)が並んでいます。言わずもがなですが、ここの名物は天ぷらそば(かき揚げそば)。
選べるかき揚げのレギュラーラインアップは、かき揚げ(玉ネギ、ニンジン)、ゲソ天(ゲソ、長ネギ)、桜えび天(桜えび、長ネギ)、春菊天、紅生姜天、ごぼう天の6種類。
レギュラー以外の天ぷらがベンチ入りしている日もあるし、揚げたてがあれば店主が教えてくれます。

画像: 豊富な天ぷら(かき揚げ)のラインアップ。この日はレギュラーの6種類に加え、ナス天やカボチャ天もスタメン入り。

豊富な天ぷら(かき揚げ)のラインアップ。この日はレギュラーの6種類に加え、ナス天やカボチャ天もスタメン入り。

値段は、天ぷらそばが430円、天もりそばが450円。ただのかけそばが300円、もりそばが320円。かき揚げは単品でも注文できて、どれでも1個130円(いずれも税込)。これは確かに立ち食いそばの価格帯です。
私は春菊天そばを注文することが多いのですが、寒い時期は 紅生姜天 を乗せた天ぷらそばがおすすめ。桜えび天やごぼう天も美味しいですし、もちろんかき揚げもゲソ天も……結局全部おすすめですね。

ちょっとちょっと。天ぷら屋じゃなくって、そば屋でしょ!?

そうでした。最も肝心なことを伝えないといけません。
まずは、そば(麺)。このお店では、注文を受けてから生そばをゆで始めます。だから待たされます。でも、このお店ではゆで置きなんてありえないので、黙って待ちましょう。
そばは自家製でも手打ちでもない製麺所のものですが、「製麺ひとすじ50年」の世田谷の製麺所 むらめんの白そばなので、味は折り紙つき。そもそもそば粉のコストを考えれば、小さな店で自家製そばの提供は難しいのかもしれません。しかし、ゆで加減はパーフェクト。コシも香りものど越しも、このクラスの麺では文句なしです。

画像: 寒い日の朝は、目にも鮮やかな紅生姜天の「天ぷらそば」(かき揚げそば)がおすすめ。身体がポカポカ温まる。430円(税込)

寒い日の朝は、目にも鮮やかな紅生姜天の「天ぷらそば」(かき揚げそば)がおすすめ。身体がポカポカ温まる。430円(税込)

そして、自家製のつゆ。数多のそば好き野郎たちが絶賛するその味は、甘辛く、口元がキリっと引き締まるような伝統的な東京スタイル。だけど、よほど丁寧に出汁を取っているのでしょう。湯気とともに鼻腔をくすぐる香りが、もうたまらないぐらいヤバい。思わずつゆを飲み干しそうになるほどヤバい。関東のそばつゆが苦手という関西の方も、きっと「ヤバい」と口を突いて出てくるはずです。
私なんて初めて食べたときは…

画像: ちょっとちょっと。天ぷら屋じゃなくって、そば屋でしょ!?

↑↑↑ウソです (๑´ڡ`๑) てへぺろ

でも、そのおいしさは本物です。
そして、手間も惜しみません。例えば、かけそばを出すときはそばをゆでている間に丼を湯で温めて、ぶっかけそば(冷たいそば)を出すときは逆に丼を氷水で冷やすという徹底ぶり。もう一度確認の意味で言っておきますが、ここは立ち食いそばのお店ですからね。

水温み 外套(がいとう)脱いで そばズゾゾ 箸でたぐるは 江戸の残り香 (by 記者)

今週の月曜(3月7日)は全国的に春本番並みの陽気でしたが、東京は雨模様だったせいもあり、かなり蒸し暑い一日でした。そんな日に「福そば」に行ったら冷たいそばが食べたくなりまして、今シーズン初の天もりを注文したのですが、やっぱり気が利いているんですよ、このお店。

画像: 写真左)天もりそばを注文すると、そばをゆでる間に天ぷらが供される。この日はマイタケ天を注文。 写真右)ゆでたてをしっかり氷でしめた、ツルっツルのもりそば。

写真左)天もりそばを注文すると、そばをゆでる間に天ぷらが供される。この日はマイタケ天を注文。
写真右)ゆでたてをしっかり氷でしめた、ツルっツルのもりそば。

そばをゆでている間、先に天ぷら(かき揚げ)を皿に盛って出してくれます。そばの上に乗せるかどうかの選択権はこちらにあるのです。
かき揚げも四分の一ぐらいのサイズに割って盛られています。こうしないと、そばつゆに浸せませんからね。もちろん、そば湯も一緒に出てきますよ。
手間暇かけたうえに気配りも忘れない、そして文句なしにおいしいそばを、たったワンコインで堪能できて、しかもお釣りがくるなんて、そんなうまい話が……ここにあるし!!

画像: 暖かい日は、やっぱり冷たいそばを"飲み"たい。「天もりそば」は、そば湯もついて450円(税込)のあっぱれプライス。

暖かい日は、やっぱり冷たいそばを"飲み"たい。「天もりそば」は、そば湯もついて450円(税込)のあっぱれプライス。

多少オーバーに感じたかもしれませんけど、率直に評するなら「よくぞここまで」とでも言うべきか、おそらくワンコインで食べられる日本そばの限界点に最も近い路麺店でしょう。
冒頭でも述べたとおり、人形町界隈には老舗から新規参入組、高級店から路麺/チェーン店まで、じつに数多くのそば屋があり、その中にはさらにおいしい店も確かにあるのですが、カテゴリーやグレードが違うんですよね。ヘビー級やクルーザー級のそば屋って感じです。
「福そば」はフライ級やフェザー級の路麺店の中では、間違いなく屈指の名店。そば屋の パウンド・フォー・パウンド(P4P) と持ち上げてもいいぐらいです。
それに路麺店ですからね。とにかく気取らず気楽に入れますし、安いし、おいしいし、その上に何かを求めるのは、さすがに欲張りでしょう。

さて、食べ終えて店を出ようとすると、店主が愛想よく「ありがとうございました」と声をかけてくれます。そして戸を開けて外に足を出したその瞬間…
「まいど!!」

…はい今死んだ!今私のハート死んだよ!
おいしいそばに満足しきって店を出る瞬間に「まいど!!」なんて声をかけられたら、もうハートに爆裂魔法直撃です。しかも背後からの攻撃ですから防ぎようがありません。
でも身体は半分店を出てしまっているので、いつも黙って去りますけど、それでも「お、おぅ。ま、また来らぁ…」って返事しています。瀕死の私のハートがねw

そんなわけで、味が評判の人気店なのでランチタイムは混み合いますけど、朝と日中は割と空いていますし、うれしいことに土曜・祝日も営業しています。
花のお江戸のファストフードの伝統を支える、人形町の小さな名店。お近くにお越しの際、ちょっと小腹が減っていたなら、迷わずGo!です。

福そば
東京都中央区日本橋人形町1-16-3
営業時間:6:40~19:45(平日)、6:40~15:45(土曜・祝日)

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